【乳歯遺残による不正咬合の矯正】シュナウザー(8か月)
【乳歯遺残による不正咬合の矯正】シュナウザー(8か月)
今回は乳歯遺残による不正咬合とその矯正です。
【生後5か月頃】
狂犬病予防接種来院時に歯の抜け替わりのチェックを行いました。
歯の抜け替わりには個体差がありますが生後3か月から7か月頃にかけて進んでいきます。
生後6-7か月でほぼ永久歯に生え変わることが多いです。
まだ犬歯が乳歯です。この段階ではまだ生え変わっていなくても不思議ではありません。
【生後7か月頃】
上下ともに犬歯も永久歯が生えましたが、下の歯は左右ともに乳歯が残ってしまっています。
また、その影響で永久歯が本来あるべき位置に移動する事ができず内側に伸びてきてしまいました。歯並びが多少悪くても…と思われるかもしれませんが、今回右側に注目してみると、犬歯の先が上顎や前歯当たりそうに伸びています。
このままだと痛みを生じる可能性が高いため、早急に乳歯を抜き、矯正必要があります。
早期であればあるほど、矯正は成功しやすいです。
【およそ3週間後 生後8か月頃】
前回の確認からおよそ3週間後です。運よく左側は自然に乳歯が抜けてくれたため、永久歯が正常な位置に戻ろうと移動しています。
残念ながら右側は乳歯が抜けず、完全に上の前歯の内側に隠れるような位置で歯が伸びてしまったため、歯の先が前歯に当たってしまっています。
もう自然に抜けるのを待つメリットはありません。
【1週間後・全身麻酔】
全身麻酔下で処置で乳歯の抜歯と矯正を行うこととなりました。
【左側 無処置】
【右側処置前/処置後】
【前歯】
余談ですが、下の前歯が二本足らなかったため、レントゲンを撮影しました。もともとない場合はどうしようもありませんが、存在しているのに出てきていない(埋伏している)場合は歯が出やすいように処置を行うこともあります。
今回はもともとないパターンでした。小型犬にはままあることです。
【術後3週間後・生後10か月頃】
左側は正常な状態です。
右は治療後完全に正常な位置に矯正されたわけではありませんが、歯の先が上の前歯と犬歯の間から出るようになりました。
治療前、治療後で比較すると特に変化がわかりやすいです。本投稿の一番下に比較画像を用意しました。
自然に乳歯が抜け落ちることを期待したい、という飼主様がほとんどだとは思いますが矯正は時間が経過するほど難しく、なるべく早期で行うことが望ましいです。子犬の場合、混合ワクチンや狂犬病の接種などで来院されることも多いと思いますので、来院時に口腔内のチェックも行わせていただきますが、子犬の狂犬病予防接種で来院する月齢では、まだ生え変わりが終わっておらず、まだどうなるかわからないことがほとんどです。
6-7か月齢のタイミングで口腔内のチェックのためにご来院いただくことをお勧めいたします。
治療前

治療後
